第25回日本小児科学会セミナー 講演内容 (1995.10.8 札幌)

小児科診療におけるバソコンの利用 (現状に合わせて一部改変)

     愛知医科大学 産婦人科学 助教授       鈴木正利 
     医療法人 若葉台クリニック(小児科) 院長  鈴木信子 

 
はじめに 

 小規模な小児科医院が1日あたり診察する患者数は2桁どまりであり、優秀な受付事務員がいれば少なくともその日の内に発生したことはすぐに思い出してくれ、即座にカルテ、レントゲン写真、検査データなどを揃えてくれる事が多いため、外来診療のみでコンピュータを大いに活用している施設はまだ日本においては少ない。多くの医院では保険の明細書(レセプト)のためにレセプト専用コンピュータ(レセコン)を導入したり、文書作成用にワープロや簡単なデータ処理にパーソナルコンピュータ(パソコン)を使用しているのが現状と思われる。しかし、数年前のカルテを捜し出して、疾病の統計や患者検索をするためには記億と手作業ではとても処理できない。今後は医療情報管理のために電子カルテやICカード、光カードも導入される方向にある。 
 
 小児科診療のスムーズな運営のために今後どのようなコンピュータシステムを構築したら良いかを未完成ながらも当院のコンピュータシステムと比較しながら私見を述べさせて項く機会を与えられた事を感謝します。

 現状の診療録(カルテ)の問題点と将来の電子カルテ構想

 医師法第24条によれば、最終診療日から5年間はカルテを保管することを義務づけられているが、実際にはさらに長期間保管している旛設が多い。しかし、開業医では10年以上保存している所は少ないし、数年ごとにカルテを総括して内容を更新し、オリジナルのカルテは5年経過後は破棄している旋設が多い。当院では大学病院と同じ考え方で、1患者につきカルテ番号(ID )は1つとし、オリジナルのカルテを永久に保存する事を原則としてスタートした。このために診療所の2階に大きな倉庫を有した設計とした。よく来院されるアクティブカルテ(約3,000冊)は、受付のカルテセレクタ内に収容してパソコンによる自動予約システムと連動し、かつテンキーによるマニュアル検索も出来るようにしている。 
 
 しかし、現実問題として紙カルテを永久に保存する事はいずれ破綻するので、他のメディアに変換して保存する事を模索して、キャノンや松下の光磁気ディスクの事務用ファイリングシステムも検討してみたがカルテ保存用には設計されてなく、使い勝手が今ひとつのため購入していない。平成7年10月より、厚生省は書換不能の光磁気ディスク方式による電子カルテのパイロットスタディを開始し、数年後に結論を出すはずと聞いているので、その時点で当院も電子カルテに移行したいと考えている。 
 
 私達が考えている電子カルテの概要は、医学辞書(医学用語・定型文などを含む)を有したワープロに医療秘書嬢が医師の診察所見を記述後、各種検査、投薬内容などを打ち込めば、点数に関運した事項は医事用レセコンに自動的に転送され、電子カルテ部分はデータベース化されて各種理学的所見や検査項目を検索でき統計処理もできるように設計する。カルテ内の重要項目はキーワード扱いとし検索もできる。各種検査は検査センターとオンラインで逐次データの転送を受ける事ができ、レントゲン写真もDICOMまたはスキャナーで取り込んで電子カルテ上で拡大して見る事ができる。医師はカルテの記入から解放され、傍らにいる医療秘書嬢が代行する。医師の机にも、ディスプレイがれているが、あくまで医療秘書嬢が打ち込んだカルテ内容の確認用と。今までの検査データやレントゲン写真を見るためにある。電子カルテの内容が正しければ医師が確認用キーを押すと、すべての内容は院内カルテ用の光磁気ディスクに、重要事項の内容も思者持参の光またはICカードに書き込まれる。以前のカルテ内容はすぐに検索できて画面上で読んだりハードコピーもとれる。診察の終わった患者には院外処方箋と請求書兼領収書が自動的にプリントアウトされ、投薬内容、検査データなどの記録された光/ICカードも受付で返却される。医事用レセコンの機能は電子カルテとはリンクして別個に稼動させた方がダウン対策上やカルテの秘守義務などからも間違いないと思われる。 
 
 従来のカルテ内容や検査データをコンビュータ入力しなおす事は大変なのでカルテをスキャナーで呼び込ませた光ディスクファイリングシステムと運動出来れば、カルテ保管のスペース間題も解決する。大病院ではオーダーエントリーシステム(発生源入カシステム)で直接医師がキーボードに打ち込むシステムになりつつあるが、中小病院や個人開業医では医療秘書嬢が入力しその内容が正確かどうかのチェックを医師が最終的に行い、確認キーを押してデータを保存するシステムの方がコストパーホーマンスが良いと思う。以上の夢のような話を医療関係の各コンピュータメーカーに説明し「開発したら売れますよ」と言うと、「厚生省の態度がはっきりしない内はとても売れません。しかも、統一仕様が決定されるのに時間がかかるでしょう。しかし、開発準備はしておきますので、また先生のアイディアを聞かせてください」の返事が返ってくるのが現在の状況である。

 当院のコンピュータ利用状況 

 患者の基本データはレセコンを導入していれぱ、レセコンからパソコンにデータ転送し簡単な統計などがとれるシステムがオプションで用意されている。しかし、本当に医療内容や投薬内容、検査内容から検索できるシステムはレセコンレベルでは構築されていない。あくまで医事計算機能主体で設計されているため、この概念は前述の電子カルテの概念を持ったシステムの開発が待たれる。 
 
 当院では受付にレセコン(三洋メディコム)2台とNECのPC9800シリーズ2台とIBMコンパチ機1台置いてあり、一太郎、MS-Word、Excel、Lotusなどが使用されている(現在はPC9800機は無くなり、IBMコンパチ機に移行)。主として患者に配布するパンフレットの作成、患者住所録、医療関係者住所録、医院経理などに使用している。診察室の2室とも机上にはMacintoshとIBMコンパチ機(CRTは共有化)を1台づつ置き、医学書院の「今日の治療指針、今日の小児治療指針、救急中毒マニュアルなど」、医歯薬出版の「お母さんに伝えたい子どもの病気/ホームケァガイド」、じほうの「ピルブック」などのCD−ROM化された物を随時使用し、患者用パンフレットもプリントしている。使用していない時はアフターダークのディズニーアニメが画面上に遊んでいるため、診察中の子供も喜んで見てくれて好評である。

 診察の合間にはインターネットに接続できるようにもなっていて、愛知県医師会がサンメディアと契約しているインターネット上のMedline検索も重宝している(現在は契約解除されて利用できず)。院内LANが構築できるように、医院設計時点で各室は床ピットと天井裏の空パイプ配管を張り巡らしてあるが、まだシステム構築が末完成のため一部分しか活用されていない。インテリジェントビルに行われるOAフロアは高価であり、水がフロア下に貯留する心配のために当院では採用していない。

 レセプト専用コンピュータ(レセコン)

 各社から開業医むけのレセコンが市販されているが、あくまで明細書作成専用機に多少のオプションがついているだけと考えた方が良い。しかし、患者の基本データは入っているので、このデータは活用すべきである。レセコンから他のパソコンヘデータ転送のできるユーティリティーもオプションであるので、パソコンヘ転送後データ加工を他のソフトで行えば、グラフ化される。また、薬剤使用量もチェックできる機能もあり、薬剤発注のオンライン化もオプションでできる。日次統計、月次統計、年次統計も簡単にでき便利である。さらに最近のレセコンでは検査や投薬内容と病名とを照合して不一致であれば追加病名を示唆する機能まで付いていて、本来の医師の診断名とは? と考えさせられる位の性能がある。 
 
 レセコンの入力間違いのチェックのためにカルテ裏書き機能を使って、当院では当日の午前の診察の診療内容はその日の夕方の診療の時間内に午前とは違う他の受付事務員がカルテと照合し、病名入力と入力修正も同時にしている。夕方の入力チェックは翌日の午前にまた他の受付事務員が行う。この様にしておくと月末に内容訂正や追加病名で追いまくられることや打ち出したレセプトを訂正することが、非常に少なくなる。当院では開院当初よりレセプトの打ち出しはレーザープリンターで行っており、千枚前後のレセプト打ち出しが用紙の入替時間もいれて3時間余りで終了する。ドットプリンターで印刷時間が長く騒音に悩まされている先生にはレーザープリンターヘグレードアップされることをお勧めする。このため、月の最終日の真夜中に大学生の長男と次男がバイトとしてレセプト印刷を行っている(現在は若手の医療事務員が担当)。受付事務員が月始めの朝に来院したときはすでに保険別にレセプト、乳障母傷請求書、保険別総括表、保険別来院患者一覧表、各種統計などが打ち出されていて点検業務にすぐ入る。これはパートの受付事務員には月末月始の残業がほとんど無く約6日間でレセプトチェックも完了し、息子たちは医学生時代から医療保険の仕組みを学ぶことができバイト料も入ると好評である。 

 明細付きの領収書の発行は個人開業医でも必須となりつつあり、アンケート調査でもレセコンから明細も記入された領収書を発行していることは評価されていて、手計算で口頭で金額を言い領収書も出さない医療機関に対しては今の現代夫婦は不信感を持っているようである。コンピュータと全自動錠剤分包機が運動して、投薬指示を出せば、各種錠剤が自動的にストッカーから落ちて分包され、薬袋に思者氏名、薬晶名、投薬方法なども印字されるシステムが大病院では採用されつつあり、奈良市の小蔦診療所(内科)では独自に構築されて看護婦なしにされているのは驚きである。しかし、分包できるのは錠剤のみで、散薬や水薬の全自動分包機は未発売のため小児科には不向きと考えている。近い将来には医薬分業に全面的に移行せざるを得ないと思われるので、従来型の分包機で個別に看護婦が調剤していて全自動分包機への過剰投資は避けている(注:平成10年9月より当院も医薬分業に全面的に移行)。

 患者予約システム 

 当院の特徴として、当日の診察申し込みを自宅から出来るようにプッシュホンによる自動予約システムをパソコン(NECPC9801FA,HD l00M,RAM8M増設)で平成3年10月より稼動させているので紹介させて頂く。(平成10年8月よりCompaq Workstatin SPシリーズに移行、平成13年11月よりNEC MATEシリーズ(Pentium 4 1.5G HDミラー化)に更新)

 開発動機は当院で定期的に実施しているアンケートに「病気の子供を連れてきて長い時間待会室で待たされるのは非常に苦痛であるし、他の思者との相互感染も心配であるので、電話で予約が出来るようにしてほしい」との要望が書き込まれていたからである。しかも、患者と個別に話してみると、他の大病院が成人向けに施行している診察後に1〜4週間後の予約を受付に申し込んでいくシステム(この機能はレセコンなどにオプションで付加でき受付事務員がキーボードから入力)ではだめで、小児科の特徴として症状が急変しやすいので、当日に自宅から予約を取りたいとの希望が強く出された。このためには診療開始前に電話で診療予約を受けるために従業員のなかで早出当番を作り、朝8時ごろより電話を受けてもらう必要がある。当院の従業員ともいろいろ相談してみたが、受付事務員全員が午前は主婦、夕方は女子大生のパート勤務者で構成されていて、とても早出は無理との結諭となった。 

 日本IBMの知人に相談してみたところ、ゴルフ場予約システムがオフコン(AS/400)と昔声応答装置(約400万円)ですでに稼動していて、ソフトを医療用に改造することは簡単だが、ハードとソフトの両方ではとても1千万円でもできないでしょうと一笑に付され、無床の零細な個人開業医では金額的に無理とおしまいになってしまった。平成3年6月に「アスキー」というパソコン雑誌にNEC98シリーズ用にNTTのヒューマンインターフェイス研究所が非常に肉声に近い昔声ボードを開発し、NTT-IT から「しゃべりん坊HG」として発売した記事を読み、電話をかけたところ、当院の開発意図に興昧を持って頂けて、共同開発することになった。幸いなことにプッシュ音であれば相手先の入力をパソコンに信号化でき、相互通信のできるNCUボードも併売されていて、当院にぴったりのソフトができることになった。 
 
 当院の予約システムは患者が自宅よりプッシュ回線の電話機またはプッシュ音の出せるトーン機能付電話機より音声メッセージに従って、診察券番号(ID番号)と生年月日(PASS番号)を入れると、受付順に診察予定時間を音声で伝え、その時間で予約をするかどうかを尋ねて予約するならば確認の数字を入力してもらい、予約を完了する。いたずらを防ぐためにID番号とPASS番号が一致しないと予約はできないようにシステムをプロテクトしてある。当院の予約システムはあくまで当日予約に限定し、午前の診察申込は午前6時30分より受付開始し午前10時には電話での受付を終了する。夕方の診察申込は午後2時30分より受付し、午後5時30分には受付終了とする。システム電源の入切や予約受付の開始終了はタイマーとコンピュータの内部時計で無人で自動的に行われる。 

 電話受付時間を診察聞始時間の3時間前よりとしたのは、最初の8ヶ月間はソフトの試用期間としバグ取りのため電話回線を1回線のみとしたためで、3回線に増設してからもそのままとなっている。3回線のため診察時間の1時間半前からの予約でもシステムの処理能力からは問題なかったが、母親が朝食を用意している間に、出勤前の夫が予約を取っている家庭も多く、午前7時ごろの入力を希望され、現在もそのままの時間帯としている。(現在は4回線で運用) 

 患者基本データファイルはレセコンより予約システムのパソコンヘ毎日夕方診察終了後にRS−232C経由で転送し、患者氏名、診察券番号、生年月日、保険種別、最終来院年月日が更新される。予約患者一覧表(診察券番号、氏名、保険種別、最終受診年月日)がディスプレイ上に表示され、一定時間ごとにプりントアウトされる。診察開始時間や終了時間、1人あたりの診察時間、初診や直接来院される患者用の空枠、途中の休憩時間などは自由に変更できるように設計した。これは、午後や夕方に校医の業務、医師会の会合、各種研究会などが入っても、前日までに変更しておけば医師の都合も加味した予約ができ、パソコンの昔声が予約を断ってくれるように工夫してある(人間ではないので無慈悲に断られると患者さんから嫌みを言われたこともありました)。以前にくらべて患者は増加したにもかかわらず、いろんな会に出席して勉強しやすくなっている。 

 カルテは患者の来院前にプリントアウトされた一覧表に従って用意でき、しかも、インターフェイスを介してカルテセレクタ(トリム、03-3945-8611)と連動されているため、当日の予約されたカルテは飛び出していて探す手間が非常に短縮される。直接来院された患者のカルテもテンキーから検索できる。患者さんからも自宅の電話から診察予約ができると非常に好評で、新規の患者も増加した。しかし、プッシュ音で入力する必要があるため、使用できる家庭が初めは少なく、急遽NTTの営業所に頼んでプッシュ回線に変更してもらったり、トーン機能付電語を購入した家庭が続出した。予約システムが稼動する1ヶ月前より診察券を変更したり、薬袋の裏にわかりやすく予約の仕方を説明した文章を印刷したりして患者への啓蒙活動をした。若い夫婦は抵抗無くこのシステムに移行して頂けたが、夫婦共働きでおばあちゃんが子育てをされている家庭では、かえって予約がコンピュータ化されてわからないとの苦情も項いたが、直接来院される思者の空枠も用意して対応している。難聴のため電話を使用できない母親からも苦情があったが、この家庭には社会福祉事務所からFAXが給付されていたため、FAXによる予約を例外的に認めたところ、これが障害者同士で評判となり現在は数家族がFAX予約を利用している。 

 当院の予約システムは小児科としての特殊性のため当日予約のみの機能としたが、NTT−ITでは内科、歯科などにもこのソフトが使用できるように2ヶ月先までの予約可能で、時間帯も患者が選ぷことの出来るソフトに改良し「Drうける君」と名づけて正式に発売したので、興味のある方は問い合わせ問い合わせて頂ければ、その診療所に合わせた仕様で納入して頂けるはずである (平成13年9月より発売元はNTTーITから、全国に支店網のあるNTT-MEへ移行し、「Drうける君2」として発売し、平成16年6月からは、NTT-DATAグループの一員であるロジカル(株)と提携し、Drうける君の機能を盛り込んだ音声認識+プッシュ入力両方可能な音声認識診療予約システム(CureSmile ver3)に至っている)。レセコンとしては三洋メディカル冨士通東芝メディカル、沖メディカル、レセプト(NEC98シリーズ用)間でデータ転送が可能となっている。現在、小児科を中心に内科、脳外科、産婦人科など200ヶ所余りの病医院で稼動中で、このような需要がやはりあったのだと内心喜び、同様な予約システムのゾロ品が4社ほどから発売されてきて先見の明があったと自負している。

 パソコン通信、FAX、電子ブックなどの活用

 
当院では愛知県医療情報システムの双方向端末としてNEC98ノート型パソコンが受付に設置されている(現在はIBMコンパチ機に移行)。当院の診療開始と終了時に受付事務員が愛知県医師会館内にある救急医療情報センターへ送信し、診療中、休診中であることを知らせる。また、緊急に患者を紹介したいときには各病院の空ベッド状況やNICUの状況も即時パソコンのディスプレイ上に表示される。また、夜間、休日における救急体制病院の状態もパソコン通信でわかるようになっている。また当院ではニフティサーブやインターネットプロバイダーとも法人契約し、各種の医療情報をこれらからも得られるようにしている。

 FAXは開業当初から設置し検査センターからの緊急検査データを受けている。検査センターとパソコン通信で自動的に検査データをもらい、経時的なトレンドグラフを図示し患者への説明にも便利なソフトも開発されているが、急性感染症などが主体で慢性疾患の少ない当院ではまだ導入していない。慢性疾患が多く検査も定期的に行われる施設では大変便利で、大手の検査センターはそれぞれソフトをもっていてやや高価ではあるが簡単に構築してくれる。診察中の業者からの電話連絡も煩わしいため、当院ではすべてFAX連絡にしてもらっているが、診察終了後にゆっくりと読めば良く便利である。また医薬品や医療機材の注文、修理依頼などもすべてFAXで業者とやりとりしている。医薬品が配達された時は従業員が注文のFAX文書と照合して受け取るため、配達の間違いもチェックされるし、証拠が残っているため業者も愚の音も出ない。また毎日昼過ぎに薬間屋がご用聞きに来院することも遠慮してもらっているため、診療終了後はすぐに主婦業にもどれる。薬のメーカや医療機繋のセールスもすべてFAXでアポイントメントを取って項いてから面談している。 
 
 また、電子ブックに薬の事典として「ピルブック」(じほう)が市販されているのをたまたま丸善で見つけ、電子ブックプレーヤーも購入して便利に使用している。これは、同名の本を8cmのCD−ROMに記録した電子出版物で、医師に販売が限定されていないため、抗癌剤の記載がないが、ほとんどの医家向薬品、大衆薬は入っている。便利なのは一般名、商品名からの検索のみでなく、薬剤識別コードからの検索もスピーディにでき、他病院の出された薬剤もコード番号がわかればすぐに照合できる。同じ会社から出ていて抗癌剤も網羅している「日本医薬品集」もCD−ROM化されコンピュータ上で検索できるが、価格が高い。当院では安価(4,300円)な「ピルブック」の方を使用しているが、抗癌剤の項が無くても不便はしていない。また電子ブックの使用方法は簡単なため、看護婦も識別コードから薬の検索が簡単にできる。マック用のピルブックも発売されたので使用しているが、使い勝手は良い。(最近、木村繁先生の「医者からもらった薬がわかる本 1997年版」(法研)がCD-ROM化され、WindowsとMacintosh の両方対応版でかつ抗癌剤も含まれ、安価で使い勝手の良い)

 
おわりに

 当院のコンピュータ化はまだ緒についたばかりで、しかもその規模は大病院が進めている病院全体のホスピタル・コンピュータリゼイションとはとても比較にならない。しかし、市井の開業医でもいろいろと工夫してパソコン、レセコン、カルテセレクタ、FAX、電子ブックなどを利用している実状を知って頂けたらと思い、あえて紹介させて項きました。さらに、いろいろと知りたい方は直接間い合わせして下さってもかまいません(診察中の電話は困りますので、FAX 052−775−8679 または電子メールにてお願いいたします)。
 
 最後に光栄ある日本小児科学会セミナーの講師として招請して下さった世話人代表の札幌医科大学小児科学教室の千葉峻三教授と、座長の労をとって頂きました旭川医科大学小児科学教室の奥野晃正教授に深謝し、この発表を終了させて頂きます。