周産期医学 第28巻7号(1998.7) 特集 周産期の情報処理
インターネットにHomePageを作成してみて-小児科
鈴木信子 (医)若葉台クリニック(小児科・院長)
鈴木正利 愛知医科大学産婦人科・助教授
はじめに
インターネットにホームページ(HP)を作成した動機は、当院の診療案内を提示するだけでなく、当院とNTT−ITとで共同開発したパソコンとプッシュホンによる自動予約システムについての問い合わせが多いため、具体的な内容をHP上で紹介するためであった。途中からは小児科・産婦人科・子育て支援に関するリンク集も加わり、患者だけでなく小児科・産婦人科に関係している医療関係者にも便利なHPに変化している。
HPの作成の経過
平成6年頃から多くの医科大学ではすでにインターネットに接続できる環境は整備されてきたが、個人の開業医ではまだまだと思っていた。当院の近くにも地域密着型のプロバイダー会社ができ、相談にも乗ってくれそうな雰囲気のため、平成8年3月にプロバイダーと契約し、診察机にパソコンをセットし、診療の合間にインターネットを楽しむことができるようになった。便利なHP作成ツールが続々と市販されるようになり、パソコン好きの主人がこれなら簡単にHPが作成できるとMac用のPageMillを購入してきたのが、平成8年5月の連休中であった。
今までに当院で患者に渡していたパンフレットや自動予約システムの論文などをPageMillに移植しなおし、写真・ロゴなどは35mmのカメラで写したものを大学のスキャナーを日曜に借用して張り付けた、背景も市販のHP素材集から可愛い象を流用して3週間余りの夜なべ仕事で主人がHPを作った。幸いにして、プロバイダーがすぐ近くであったため、転送上のトラブルもすぐに解決でき,平成8年6月6日にインターネット上に当院のHPを出すことができた。1年後の平成9年6月に当院に新しく勤務された看護婦の兄(片岡君)(当時学生)にHP作成の各種コンテストで受賞された方がいることがわかり、一度もお会いすることもなく電子メールとFDのやり取りだけで、HPの大改訂をした。文面はほとんど変わらないが、自作とプロとの差は歴然でデザインは非常にスッキリし、アニメーションGIFとMIDIも取り入れて楽しいHPに変身できた。HPは作りっばなしでは内容が陳腐となりやすいため、その後も Adobe GoLive(HP作成ツール)を使って主人が1月に1回程度の更新や追加・訂正をして内容の充実をはかっている。現在のHPの構成は目次、診療案内、小児科の情報箱(当院の診療方針を開示)、院長およびスタッフの紹介、医療関連のリンク集、その他のリンク集などで構成し、ウィンクする当院のロゴマークと季節にあった音楽が流れるようになっている。
HP作成後の反応
当院では毎年アンケート月間を設けて、当院に対する苦情・要望などを調査していて、その一部は外来小児科学研究会にも発表したことがあるが、そのアンケート中にインターネットについての設間をこの2年間は入れている。平成8年7月の時点では当院に通院中の患者で自宅でインターネットに接続している方は3家族のみであったが、平成9年7月には、32家族に増加している。いずれも、7月に受診された約1,000名余りの中ではまだ少数派であるが、勤務先で父親がインターネットに接続できる環境にある方はもっと多いはずだと思われる。当院のHPを見たのでと言われて新患で来られた方も数名はいるが、他の広告媒体(電話帳、看板など)に比べると現時点では全く広告的価値はないと考えている。(追記:平成11年7月のアンケートではインターネットに接続できる当院の患者さんの家庭は32%に至った)
当院のHPを見られる多くの方は、医療関係者が中心のようである。小児科・産婦人科・子育て支援などに絞ったリンク集は好評で,Yahoo Japanよりも早くて多いとお誉めの電子メールを頂いたこともあった。相互リンクしているHPも多いため、そのHPから当院のHPに訪問される方も多いと思われる。また、電話予約システムに興味を持っているソフト会社も当院のHPを訪問されているようである。
質問コーナーなどは回答が大変と考えて当院のHPには設置してない。しかし、電子メールで小児科関連の質問をしてこられる方も、時々ある。患者を診察しないで返事を書くことには抵抗があるため、その都度一般的なコメントに留めて、主治医の先生とよくご相談するのが一番ですと逃げているのが実状である。ただ、当院に受診中の患者からの電子メールで間い合わせがあり、病状・薬剤の説明や生活指導を個別でしたこともあったが、頻度的にはほんの数人のみである。患者同士はニフティーサーブのフォーラム(FFAMILY)やニュースグループ(fj.life.children) などで井戸端会議的に大いに討論されていて、今後はこのような質問も増加すると思われる。しかし、その取り扱いには慎重であるべきと考え質問コーナーは未設置のままでHPを運営している。
インターネット導入で便利な点
診察机にパソコンを設置して診療の合間にインターネットに接続するようになって、便利になったことは多くあった。無料のMed1ineで海外医学雑誌の文献検索が簡単にできるようになったことである。愛知県医師会はサンメディアと団体契約して、会員であれば無料で自由にMed1ineおよび和雑誌の特集号検索ができるコーナーを開設している。海外の無料Med1ineはどうしてもリスポンスが遅いが、国内のサイトで検索できるため大学並の環境にあると言える。
また東北大学小児科学教室のメーリングリスト(M L)や広島大学法医学教室のMLに参加しているので、いろいろな情報が電子メールで入ってきて勉強になる。医学雑誌と違ってその先生の本音が吐露されていることも多いと感じている。最近は、大学関係の医師および製薬メーカーのMRの一部の方とは電子メールで当院との連絡をするようになってきた。患者の検査結果や入院経過も郵送では時間がかかるが、電子メールでは即刻届く。毎日2回は電子メーノレを開封点検しているが、時間的にも数分以内であり、返事の必要な場合は暇な時間群に書いて後でまとめて送付している。ただ、インターネット上の電子メールは漏洩の問題点もあるため,漏れても困らない内容に限定するように注意している。
おわりに
最近NTTはパソコンとOCNとの接続をすべて代行し、すぐ便えるようにセットしたパソコンを販売し始めた。周囲にパソコンに強い家族がいなくてもインターネットは開始できるようになりつつある。あえてHPを業者に作ってもらう必要はないと思うが、自由に診察机の上からインターネットを通じて情報を得ることは今後の開業医としては大切でこんなに便利なものはないと思っている。
最後に当院のHPのURLと電子メールをお載せいたしますので、ご笑覧下さい。
URL https://www.wakabadai-clinic.or.jp/
電子メール nobuko@wakabadai-clinic.or.jp