日頃は当院をご受診下さいまして、有り難うございます。さて、突然の臨時休診で、患者さまにはご迷惑をお掛けしましたが、事情は下記の通りでございますので、よろしくご理解を賜りたく存じます。
昨年(平成12年)のお盆の頃から、上腹部痛が出現してきたため、夏季で暇な外来の合間を利用して、愛知医大で消化器系の精査を施行したしたところ、膵臓に1.5cmの腫瘍が見つかりました。超音波断層、CT、MRI、MRCP、生化学、各種ホルモン検査、腫瘍マーカーなどから、「膵島細胞腫(膵内分泌腫瘍)」と愛知医大・第三内科野田助教授から診断されました。9月21日に母校の名大病院13階東病棟に入院、9月26日に第一外科の二村教授執刀で手術を受けました。術中出血量も200ml以下で輸血も無しにて無事終了しました。術後経過は非常に順調で、29日朝には排ガスがあり、平熱に戻りました。IVH(経静脈的高カロリー輸液)も続いていましたが、10月2日より流動食の食事も開始され、10月4日からは通常の補液に移行し、10月6日よりは点滴も無くなりました。また、10月6日には名大中央検査部の病理組織学的検査により、最終的に「膵島細胞腫(膵内分泌腫瘍・ガストリノーマ 良性群)」と診断されました。膵臓部分に留置したドレーンがあったため、入院が長引きましたが、ドレーンもようやく抜けてまして、試験外泊後、平成12年10月23日に退院しました。約2週間の自宅療養後、体を慣らし日常生活に戻りました。
患者の皆様には、突然の休診でご迷惑をお掛けしましたが、よろしくお願い申し上げます。入院に際し、名大もしくは愛知医大の小児科に臨時代務をお頼みしようかとも考えましたが、日替わりの代務の先生ではかえって患者さんも不安がるでしょうし、長男・基正(名大H9年卒、安城更生病院小児科から10月に名大小児科へ帰局)も卒後3年半の駆け出し小児科医で、まだ力量不足と思っていますので、あえて臨時休診にさせて頂きました。
1か月余りの期間休診していましたが、平成12年11月6日より診察を再開しました。なお、患者の皆様には申し訳けありません。年内は水曜日と木曜日の夕方診察はお休みさせて頂きました。平成13年1月5日より、正月明けの診療を再開いたしましたが、水曜日の夕方診察は当分休診する予定です。何とぞ患者の皆様には、ご理解とご容赦のほどよろしくお願い申し上げます。
なお、入院中に患者として感じたことなどを、平成12年12月発行の名東区医師会の小冊子「名東医報・第15号」に書かせて頂きましたので、興味ある方は、ご笑読下さい。
(医)若葉台クリニック (小児科)
院長 鈴木 信子
術後8日目の院長の近影(平成12年10月4日)
しだいに元気を取り戻し、新聞やテレビを見る生活になりました
主人と一緒に病室にて 見舞いに来た従業員と名大病院前にて
退院前の院長近影(平成12年10月20日)
長男と一緒に病室にて(10/22) お見舞い客と自宅にて(10/31)
院長も元気になりつつありますので、ご安心下さい
術中写真 (名大第一外科・神谷講師より提供)
(黒丸に囲まれた病巣を摘出するために、主要血管にテーピングしているところです)
フォルマリン半固定後の割面 (名大第一外科・神谷講師より提供)
(膵島細胞腫は血液が豊富なため、茶色の組織となっています)
(正常膵臓との境界は明瞭で、この切出し標本からも良性と推定されました)
病理組織写真(HE染色) (名大第一外科・神谷講師より提供)
(腫瘍細胞は円形から楕円形の核を持った大きさの比較的そろった細胞が、シート状、
リボン状に配列し、典型的な膵島細胞腫の所見であり、腫瘍は結合被膜によって隔てられ、
浸潤像を認めず、脈管侵襲も陰性であり、予後良性と診断された)
(名大中央検査部の病理組織検査報告書)
免疫組織化学染色写真 (名大第一外科・神谷講師より提供)
(chromogranin A 抗体に濃染し、islet cell tumor と確定された
insulin抗体 とcalcitonin抗体 には全く染まらず、glucagon抗体, somatostatin抗体, ACTH抗体
に淡く染まり、右強拡大の見られるようにgastorin抗体 には強く濃染されている
左の弱拡写真の左上方部分は正常膵臓のため染まっていない)
術前の血清gastrin値は正常値上限内であったが、免疫組織化学染色検査により、
gastrinoma と最終的に確定診断された